「学校の英語教育では文法ばかり教えているから、英会話ができない」という意見があります。
しかし、この意見は本当に正しいのでしょうか。実は、私が英語をビジネスの現場で使ってきた経験からいうと逆です。
ビジネスの現場では受験で学んだ英語が役立つ場面が多いのです。なぜなら、受験で学んだ文法や単語が英語力の基礎になるからです。
この記事では、「受験で学ぶ英語の文法学習が日常英会話やビジネス英語がいかに大切か」をお伝えします。
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「受験英語は役に立たない」といわれる理由
「受験英語の勉強は役にたたない」と主張する人は、「英語でコミュニケーションを取れていない日本人が多い理由は、受験対策の英語ばかり学んでいるからだ」と考えています。
これは正しい部分があります。なぜなら、受験英語で高得点を取れる人が仕事で使えるような英語を習得しているわけではからです。
実際に、私の友人で東大卒で受験英語が得意だった人がいますが、その人は英語を話せませんでした。
このように「受験英語の文法は役にたたない」と考える人は、「受験対策の英語を学んでも、英語でコミュニケーションできないなら意味がない」と批判しているのです。
しかし、本当に受験英語は役に立たないのでしょうか。実は、そんなことはありません。むしろ、受験英語で学ぶ内容を理解しておくのは、仕事で英語を使うときに役立ちます。
ビジネスの現場では、受験英語の文法が使われる
「受験英語は役にたたない」と言われますが、ビジネスの現場では、受験英語で使われる英語はたくさん使われます。
例えば、私は以下のようなやりとりを社外のネイティブと行っていました。
社外のネイティブからのメッセージ
I was wondering why you will not allow Chapter 6 to be reviewed by XXX for ABC Co., Ltd. so I looked into the file containing Chapter 6 and realize that the table of contents does not include any of Chapter 6 headings although Chapter 6 is prepared. So regardless of what the cover letter says, please be sure the final document has Chapter 6 described in the table of contents.ABC社用の書類において6章をXXXにチェックできるようにしないのはなぜでしょう。確か、6章は資料に含まれていて資料も準備していたのに、目次に6章は入っていない。カバーレターの記載に関わらず、最終版の目次に6章が記載されていることを確認しておいてほしい。
この文章では、受験英語で学ぶ内容が多く出てきます。
英語(下線部) | 説明 |
(目的語) to be reviewed | 確認されるべき (目的語) |
regardless of what the cover letter says | regardless of ; ~に関わらず
what (主語) says ; (主語)の記載によると |
has Chapter 6 described | have 物 pp ; 物をppにする |
上記の英文は、英語のネイティブスピーカーとやりとりした事例です。受験英語で学んだ文法が数多く使われていることがわかるはずです。
もし、上記の文章を理解できないようであれば、英語で議論したり交渉したりするレベルにおいて明らかに不十分と言えます。もちろん、表面的な英会話だけやっている分には可能かもしれません。しかし、交渉や議論の場では、上記のような受験英語レベルの文法や単語が次から次へと出てきます。
実際、私も受験英語レベルの文法や単語を学んでいなかったら、上記の英文をスムーズに理解することはできなかったでしょう。
これをみれば、「英語でコミュニケーションをとれる日本人が少ない」理由は、「受験対策の英語を学んでいるせいではない」ことがわかります。むしろ、受験対策の英語を学んできたから、相手の伝えようとしている英語を多少なりとも理解できるのです。
「読む・聞く」では、高度な文法や単語が必要である
上述の通り、受験英語で学ぶ文法や単語は実際の仕事で使われます。レベルで言うと、大学入試で出題される英語の文法や単語の問題であれば満点が取れる力は必要です。
なぜなら、なぜ高校レベルの文法が必要かというと、「ネイティブスピーカーはわかりやすい英語を使ってくれるわけではない」からです。
例えば、上述の例で示した「Regardless of what the cover letter says」のような文章は、高度な文法が利用されています。こういった文章は、非ネイティブであれば、Whatever descriptions of the cover letter is, といったように書いてもらったほうが理解しやすいです。
しかし実際の仕事では、相手は「こちらが英語の非ネイティブである」ことを考えてくれません。ネイティブ同士で使うようなコミュニケーションを当然のように使ってきます。
そのため、英語を聞いたり読んだりする場合、ネイティブがビジネスの世界で使用する標準的な英語、よく使われる語彙や表現を理解できるようにしておく必要があるのです。
そのためには、高校レベルの文法や単語は必須です。高校までに学んだ文法や単語を習得しておかないと、英語を理解できません。
「書く・話す」では、伝えるための英語を習得する必要がある
ただ、勘違いしてほしくないことがあります。それは、英語を書いたり話したりする場合は、「複雑な言い回しや、難しい語彙を使用する必要はない」ことです。
なぜなら、難しい語彙や文法を使わなくてもコミュニケーションは可能だからです。例えば、
こちらから海外に向けて書いた英文
But there are some questions.
[1] Photocopying means that we should send you the finalized documents as papers?
I would like to send you the documents as PDF files by email.
[2]You are supposed to receive the documents
– XXX with appendices from me by email
– SoC from me by Fedex (8 copies)
– CL from YYY by Fedex (8 copies)
[3] If a table must continue to a second page, table headings are needed on both first and second pages?
このように、私がメールや電話会議では英語を使う場合は、中学生でも分かるようにシンプルな英語を利用していました。また、伝えたいことを3つに分けました。こうすることで、分かりやすく伝えることができます。
英語で何かを伝える場合、意思疎通をするのが目的です。難しい表現は不要です。そのため、こちらが伝えるときは短く伝えること、わかりやすい単語を使うことができれば十分に伝えることができます。
難しい文法や単語は理解できればいい。よく使う文法や単語は使いこなせる必要がある
上述のとおり、「書く・話す」と「読む・聞く」で目指すレベルは変わります。「難しい文法や単語は理解できること」、「よく使う文法や単語は使いこなせること」を目指すのが重要です。
たとえば、日本語でコミュニケーションをとるとき、読むことはできますが、書けない漢字があるものです。
それと同じように、読んだり聞いたりしたことを理解はできるけれど、書いたり話したりできない語彙や文法項目・構文があっても全く問題ありません。
むしろその方が自然といえます。伝える(話す・書く)英語の範囲は、理解できる(聞く・読む)英語の範囲」より狭くてもよいということです。
ただ、いずれにせよ、ネイティブと英語でコミュニケーションを取ることを目指す以上、高校レベルの文法や単語を理解することは必須です。
受験英語を仕事に活かしきれない理由
ここまで、受験英語レベルの文法や単語の重要性をお伝えしてきました。それは、受験英語の文法や単語が英語の基礎だからです。
しかし、多くの人が感じている通り、受験英語の文法や単語を学ぶだけでは、英語を仕事で使えるようにはなりません。
その理由は簡単で、ビジネスで使われる英語には、ある程度の流暢さが求められるからです。そして、流暢さを身につけるには、文法や単語をたくさん覚えるだけでは不十分で、英語を話す練習をする必要があるのです。
たとえば、スポーツにおいて体力トレーニングだけを続けている人がいたらどうでしょうか。体力はあるけれど、試合ではまったく使えない選手になってしまうはずです。スポーツにおいて、体力は最も基礎で重要ですが、それだけでは試合で活躍できる選手にはなれないのです。
これは英語でも同じです。文法や単語の知識は非常に重要です。しかし、文法と単語だけ習得してもビジネスで使われるレベルの英語を使えるようにはならないのです。
受験英語だけでは流暢さが身につかない
受験英語を学んできた人なら分かるかもしれませんが、受験英語を一生懸命学んでも、自信を持って「私は英語を使えます」という人は少ないはずです。
受験英語の勉強だけで、ネイティブスピーカーの英語を即座に理解し、こちらの考えを英語で伝えることができるようになる人はまずいません。
なぜなら、受験英語には流暢さを習得するトレーニングがないからです。そして、これこそ英語でコミュニケーションをとれる日本人が少ない原因です。
ただ、これは受験英語を学んできた人に限った話ではありません。TOEIC900点を取ろうが、英検一級を持っていようが関係ありません。もし、英語でコミュニケーションをとれるようになりたいなら、英語を反射的に使えるようになるためのトレーニングが必要です。このことについては、こちらで詳しく解説しています。
英語初級者のままでいいなら、文法も単語も不要
ここまで、仕事で使う英語を学ぶには受験英語の文法や単語が重要であることをお伝えしてきました。
しかし、「ずっと初級のままでいい」や「海外旅行で単純な内容の英会話ができれば十分だ」というのであれば、文法を重視した学習は不要です。
なぜなら、高いレベルで英語を使えなくても、旅行を楽しむことはできるからです。
たとえば、草野球を楽しむレベルでいいなら、ストイックに練習する必要はありません。それよりも楽しんで野球をプレーするほうが重要です。
実際、海外旅行であれば、スマホの翻訳アプリを使ったり中学英語の寄せ集めでなんとか切り抜けることができます。
このように、日常英会話やビジネス英語といったレベルでないなら、多くの文法を学ぶ必要はないと言えます。
「文法ばかり教えている学校の英語教育は間違っている」という意見はよく聞きます。しかし、私が英語をビジネスの現場で使ってきた経験から言えば、受験で学んだ英語が役立つ場面が多いです。実際、ビジネスの現場で英語を使うなら、高校レベルの文法や単語は必須です。
ただ、受験英語では流暢さを学ぶトレーニングがありません。もし仕事で使える英語を習得したいのであれば、高校レベルの文法や単語に加えて、流暢さを習得する必要があるのです。